今晃さん訪問

今晃さん訪問

青森県の嶽温泉に工房をかまえる今晃さんのところに伺いました。
弘前駅から40分ほど車を走らせ、到着。
小屋のような建物があり、そこが今さんの工房兼自宅です。
周りにはほとんど何もなく、小鳥のさえずりや虫の声が聞こえます。
玄関口から来たことを告げると、奥から「どうぞ」という声。
部屋に案内され居間に入ると、
左には木取りを済ませたイタヤカエデが天井近くまで積まれ、
目の前の壁にはへのへのもへじが2つ描かれています。
お茶をいただきながら、
鳴子での厳しい修業時代の話や、震災の話、冬の話など、
たくさんの話をしました。
饒舌ではありませんが、ぽつりぽつりと芯を捕らえた言葉が出てきます。
そんな中、今さんはおもむろに机の下から箱を取り出し、
紙に包まれたこけしを1つずつゆっくりと机に並べていきます。
一見かわいく素朴に見えますが、
狂気を内に秘めたこけしが、どんどん出てきます。すごい。
「描く時は無重力だ。宇宙ってすごいなあ。」
そんなことを言いながら、包み紙を解いてきます。
描彩と木地が完全に一体化していて、
『描いた』ようには思えません。
『出来た』という言葉が一番近いかもしれません。
今さんは「理屈とか知識とかが邪魔になるんだよな。」と言い、
自分のこけしを手に取り、ニコニコしています。
何かを表現する時、
いろいろな技術や知識を身につけて上手になることはできますが、
それだけでは、生き生きとしたものを作ることはできません。
その技術や知識を捨てて、自分自身の中に潜っていくことで、
初めて自分が出てくるんだなと、
今さんのこけしを見て、改めて強く思いました。
円空の仏像を見た時にも同じように感じたことを思い出し、
自分はすごいところに来たんだなあと鳥肌が立ちました。

僕も自分自身の中にもっと潜らなければいけません。

写真は今回の訪問にあわせて作っていただいた、
今さんのこけしです。
左から、本人型、多兵衛風帽子、多兵衛風、伊太郎風えじこ、彦三郎風。