下北條の加藤廉兵衛さんを訪ねて その1

下北條の加藤廉兵衛さんを訪ねて その1

3月24日
土人形工人、加藤廉兵衛さんに会いに下北條に行きました。
数日前に訪問の旨を手紙で伝えていたのですが返事は来ず、
97歳とご高齢ということもあり、
もしかしたらもう作っていないのかもしれないなあと思っていました。

それでもせっかく近くまで来たので、
ダメ元で住所の場所に行ってみることに。
インターホンを鳴らしても返事はなく、
表札にも違う方の名前が書いてあります。
住所が違うのかなと思い、
付近を散策してみてみても、
どこにも「加藤」の表札は見当たりません。
強風と雨の中、知らない町を歩き回り、あきらめかけたその時、
床屋さんが目に入り、そこで聞いてみることに。
「加藤廉兵衛さんのお宅はどちらかおわかりになりますか?」
すると、
「そこだよ、その平屋。」
と目の前の小さな平屋を指差しています。
表札もかかってなかったので、倉庫のようなものかと思い、
全く気に留めてなかった平屋が、
廉兵衛さんの家だったのです。

高鳴る気持ちを抑え、
ゆっくりと戸を叩きました。
返事はありません。
中からは大きなテレビの音がします。
次は少し大きめに叩いてみました。
まだ返事はありません。
何度叩いても、
テレビの音しか聞こえてきません。
失礼だとはわかりながらも、
声をかけてみようと、戸をあけてみました。
すると、中には彩色途中の土雛や、まだ素焼きの状態の人形が
目に飛び込んできました。
これはすごい。
色が鮮やかに輝いて、生き生きとしています。
同じ土雛でも表情が全く違う。
こんなすごいものを目の当たりにしてしまったら、
帰る訳にはいきません。
ただいくら声をかけても返事はありません。
でもすぐそこに気配は感じます。

声をかけ続けて30分くらいは経ったでしょうか。
中からテレビとは違う物音がします。
すると、廉兵衛さんがそろりそろりと目の前に現れました。
こちらを不思議そうな目で見ています。
廉兵衛さんは97歳。
しっかりとした表情をしていて、
とても97歳には見えません。
「手紙で訪問の旨を伝えていました、佐々木です!
人形を見させていただきたくて、お伺いしたのですが。」
というと
「何?手紙なんてきてませんよ。わざわざ人形見にきたのかい。こっちにあるわ。」
と、向いの建物へ。

続きはまた後日。

写真は廉兵衛さんの後ろ姿。