下北條の加藤廉兵衛さんを訪ねて その2

下北條の加藤廉兵衛さんを訪ねて その2

ガシャガシャと鍵を開け、戸を引くと、
そこは作業場でした。
奥に目をやると、
ずっと見たいと思っていた廉兵衛さんの人形が、
棚に大量に収まっています。
300はあるでしょうか。
ものすごい数です。
小さくてユーモラスでいびつな形、楽しく明るい色彩。
どれもがどこか懐かしく、新しい。
そして限りなく素朴です。
胸が締め付けられる程に素晴らしい。
「今は寒いから作っていないんだ。
寒くてやってられんよ。
そこにあるのは前に作ったものだな。」
この作業場には暖房はなく、ひんやりと寒い。
人形達は暖かく微笑んでいます。

廉兵衛さんには師匠がいません。
戦争から帰ってきて、
どうしても作りたくなって作り始めたようです。
その当時の仲間からは
「そんなもん作ってもなんもならん、アホの中のアホだ。」
と言われ続けていたようです。
それでも作りたくて作りたくてたまらなく、
作ることをやめなかったのです。
誰に何を言われても絶対に作りたかった。
そうおっしゃっていました。
作り続けているうちに、
たまたま廉兵衛さんの人形を目にした
民藝運動家である吉田璋也の目にとまり、
「これこそが郷土玩具だ!」と大絶賛されます。
それまでは誰にも評価されることはなく、
自分の作る物に対して自信はなかったようです。
吉田 璋也に言われた「これこそが郷土玩具だ」。
その言葉がなければもう作っていないと
廉兵衛さんは言っていました。

満州で金服の兵士の亡霊を見た話、自民党の石破さんの話、車の話、物作りの話。
そんな話をしているといつの間にか日が暮れてきていました。

帰り際、
「郷土玩具はなくなりませんよ。
自分が作りたくて作りたくてたまらなかったように、
どうしても作りたいやつが出てくる。
だから絶対になくなることなんてない。
師匠なんていなくても作りたいやつは作る。
ただ人形を作ればなんでも郷土玩具になるんじゃないんだよな。
それで若い頃は悩んだもんだ。
暖かくなったらまた作るかな。」
そう言って廉兵衛さんは笑いました。