伊藤松三郎さん、松一さん

伊藤松三郎さん、松一さん

今年の全国こけし祭りの会場で、
2006年にNHKで放送された「新日本紀行」が上映されていました。
「こけしの詩~宮城県鳴子~」と題した特集で、
鳴子のこけし工人、伊藤松一さんを中心に構成されたものです。
番組の中では、
昔同じ番組で特集された
松一さんの父親であり師匠の伊藤松三郎さんの映像も
組み込まれていました。
自分の知らない時代の鳴子温泉の映像が流れていたこともあり、
興味深くじっくりと見ていると、
自分の隣に松一さんご本人がいらっしゃいました。
「あれは親父だ。お、おらが出てるな。」
「なつかしいなあ、みんな若いなあ。昭二さんだ。ああ。」
そんなことを話す松一さんの声は
生きてきた時間がそのまま声になっているようで、
優して暖かくて深い。
まるで松一さんのこけしそのものでした。
鳴子こけし工人の長老である松一さんと、
松一さん自身の映像を見ることができるなんて、
これほど素敵なことはありません。

松三郎さん、松一さんのこけしをずっと眺めていると、
あの時会場で感じていた優しくて暖かい空気を感じることができ、
そこには表面的な意味での伝統ではなく、
精神的な繋がりのある大きく深い伝統が見えてきます。
そして鳴子温泉の硫黄の匂いが恋しくなるのです。

左から伊藤松一さん伊藤松三郎さんのこけし。