桜井昭二さんのこけし、本人型。

桜井昭二さんのこけし、本人型。

桜井昭二さんのこけし、本人型。
大きく描かれた鬢に、しっかりと結われた髷。
静かに笑みを浮かべた表情は、
どこか息子の昭寛さんに似ているような気がします。
胴模様、
左のこけしは車菊がぼってり描かれ、
右には流れ菊が繊細に描かれています。
胴下に引かれた太い轆轤線が、
頭部の鬢、髷の黒い色面を支えています。

これらのこけしは昭二さんが昭和31、2年に作ったもので、
それ以前もそれ以降もこのようなこけしは作っていません。
この時期昭二さんは新型こけしにも力を注いでいて、
前にご自宅で見せていただいたそれらのこけしは、
優れた造形感覚が多分に活かされた、
とても独創的なものでした。
この2本のこけしはそんな新型の空気を吸い込んだ、
独特の情味を持ったものだと思います。
この時代だからこそ作り得たこけしです。

何かを作り始めると、
ぐぐぐっとのめり込み、
次々と新しいこけしを生み出していった昭二さん。
新型を作らなくなってからも、
素晴らしい古品に出会うと、作ってみたいと身体がうずき、
表に出すことはなくても、
他系統のものまでも作っていたようです。
自分が楽しむ為に。
先日娘さんから伺ったのですが、
秋田木地山の小椋久太郎作の大きなこけしが居間に飾ってあり、
立派なこけしだなあと何気なく底を見ると
「桜井昭二」と署名がしてあったようです。
そんなエピソードからも
昭二さんのこけしに対する想いが滲んで見えてきます。

昭二さんは亡くなられてしまいましたが、
その想いや熱意は、
息子の昭寛さんにしっかりと受け継がれています。
木地挽きや描彩を受け継いでいくだけでも素晴らしいことですが、
昭寛さんはその精神までも受け継いでいます。
血の繋がりの強さや、
伝統の深さを感じずにはいられません。