大沼昇治さんの佐藤円吉型

大沼昇治さんの佐藤円吉型

遠刈田系、大沼昇治さんの佐藤円吉型。
昭和40年代後半に作られたものです。
円吉は昇治さんの師匠である佐藤治郎の師匠にあたる工人です。

胴には描かれた散らしたぼた菊と三段の重ね菊が
木地にしっとりと染み込み、
透けて見える木肌が美しく、
見るものの心にも優しく染み込んできます。
頬の柔らかそうな丸い顔には、
三日月目、割れ鼻がすっと描かれています。
どちらかと言えば地味で、
派手さはないけれど、
大きく包み込んでくれるような表情をしています。
まっすぐで誠実で、
温かくておおらかなこけし。
普通のこけし。
小津安二郎の映画を思います。
お茶漬けの味。
普通であることが最も難しいことのように思います。

昇治さんが亡くなられて、
円吉型を作る工人はもういなくなってしまいました。
寂しさを感じずにはいられませんが、
こけしは残ります。