大山独楽の播磨屋さん

大山独楽の播磨屋さん

雨の中、訪れた大山独楽の播磨屋さん。
大山信仰の中心、阿夫利神社のあるこの山は、
昨年の10月に伺った時も雨でした。
播磨啓太郎さんがこの場所で70年近く作り続けています。
江戸時代に刊行された「江都二色」には大山細工として、
明治時代刊行の「うなゐの友」にも大山名物として、
独楽と臼、木槌が載っています。
今回は今戸焼白井さんに伺ったのと同じで、
ある仕事の取材の為の訪問でした。

たくさんの道具に囲まれ、
木の香りで満たされた工房は、
子供の頃に作った秘密基地を彷彿とさせ、
軽い興奮を覚えます。
いろいろな話を伺いながら
独楽づくりを拝見させていただきましたが、
できるまであっとう間で、ひとつの独楽をつくるのに、
おそらく10分もかからなかったでしょう。
普段は木取りをする時は一日ずっと木取り。
轆轤に上がる時は一日ずっと轆轤。
繰り返しの作業をずっと続けています。
木地師は道具も自分で作るのが基本ですが、
啓太郎さんもこの例に漏れず、
独楽を仕上げる為の道具は全て自分で作っています。
自分の手に道具が馴染んでくるまで、
改良に改良を重ねていきます。
鉋も本当にたくさんの種類がありますが、
手に馴染むものはほんの数本で、
結局いつも同じものを使っているようです。
キレが悪くなってくると、鉋を研いで、
また同じものを使います。
独楽の材料になる木は富士山の麓、御殿場から取り寄せているミズキです。
半年ほど乾燥させた後、
木取りをして轆轤にかけるのですが、
あまり早く使うと割れることも多く、
季節によっても扱い方は違ってきます。
切られた後の木も生きているのです。
それにしても木を轆轤にかけはじめた時の強いの木の香り。
何度も嗅いできましたが、たまりません。
この香りも工房に行きたくなる一つの要素です。

独楽の他に播磨屋さんは玩具も作るのですが、
玩具にこそ播磨屋さんの個性は溢れているように思います。
溢れ出てしまって大変なことになっています。
もともと大山独楽は独楽、臼と木槌を作るのがメインで、
他の玩具を作ることはなかったようですが、
啓太郎さんが各地の木地玩具からヒントを得て創作し、
たくさんの玩具が生まれました。
兔笛、自動車、動物の玉押し、達磨独楽などなど
絵心とかセンスとかそんな言葉は全部めちゃくちゃにしてしまう程の
とてつもなく明るい破壊力があります。
ざっくりとした造形にキッチュな色使い。
玩具に使う色は、ネオカラーなど顔料のもので、
鑞仕上げではなく、ニス仕上げ。
それ故、どこか小学生の工作のような自由さと可笑しみがあります。
悩んだり落ち込んだりしている時に見ると、
そんな自分が馬鹿馬鹿しくなります。
「こんなものこーしてこーしてこうだ!出来上がり!」
そんな豪快さが見る人の気持ちをほぐしてくれるのです。

写真は木地を挽いている啓太郎さん。
モーター式轆轤の音が心地よいのです。