多摩だるまの根岸さんに会いに

多摩だるまの根岸さんに会いに

先日、これもまたある仕事の取材で、
瑞穂の箱根ケ崎にいらっしゃる
多摩だるまの根岸さんのご自宅にお伺いしてきました。

自分の住んでいる小平から車で1時間弱。
新青梅街道から右に入ると、
さっきまでの交通量が嘘のように、
一瞬にしてのどかな風景が広がります。
そんな風景を見ると、ドキドキしてきます。
どんな話が聞けるのだろう、
どんなものがあるのだろうと。

工房に到着すると、
ご主人の根岸利夫さんと奥様が
型に紙を張る作業をしていました。
息子さんは外で達磨の底の部分を作っています。
「こんななにもないところによく来たなあ」と
紙を張りながら笑いかけてくれます。

84歳になる利夫さんは小学生の頃からの手伝いを含め、
80年近く張子を作っています。
他の多摩だるまの製作者は
小さい物は機械張りで済ませることがほとんどですが、
根岸さんの張子は、どの大きさのものも全て手張りで、
達磨、おかめ達磨、招き猫、だるま抱き招き猫などを製作しています。
効率を考えれば、機械張りも仕方なく、
その中にも良いものはたくさんありますが、
手張り独特のボコボコした手触りは、
僕が張子に求める魅力のひとつです。
無心に紙を重ねて張られた人形からは、
無意識の中から生まれる無垢な美しさと暖かみを感じます。
全てを昔のままでやるのは難しいけれど、
可能な限り昔のやり方でやろうとするその気持ちは、
とても強いものに感じます。

根岸家の型には利夫さんのお父さんが彫ったものと、
息子さんが彫ったものの2種類があります。
お父さんのものは大正時代に作られたものがほとんどで、
少し細身の型ということもあるのか、
どことなく怪しい雰囲気を醸し出しています。
息子さんのものは
現代に合わせて少し丸みをもたせて彫っているようです。
それでも可愛く、甘くなりすぎないのは、
根岸家特有の泥臭さからくるものではないでしょうか。
息子さんは横向きの招き猫や、虎猫など、
精力的に新しい型を彫っていらっしゃり、
その型からも根岸家特有の泥臭さが滲み出ています。

今の時期はとにかく紙を張る作業のみで、
絵付けをするのは秋からです。
工房には絵付けを待つたくさんの達磨と招き猫が待っていました。
本格的に売りに出されるのは、
拝島だるま市が開催される正月からです。
その時が楽しみで仕方ありません。
ああ。