こけしフォーラムについて その1「昭二さんとの出会い」

こけしフォーラムについて その1「昭二さんとの出会い」

9月5,6,7日に鳴子温泉で開催される、
全国こけし祭り。
記念すべき第60回です。
その中で7日に行われる「こけしフォーラム」にて、
桜井昭寛さんとお話をします。
桜井昭寛さんは
僕がこけし蒐集をするきっかけになった桜井昭二さんの弟子であり、
息子さんです。

自分と昭二さんの出会い。
以前こけし手帖に昭二さん追悼として寄稿しました。
以下その全文です。

______________________________________

こけしを好きになってまだ1年も経っていない2009年の夏に、
鳴子の全国こけし祭りに出かけました。
会場の中で昭二さんの四寸ほどのこけしを手にとり眺めていると、
目の前にいるおじいさんが「おい。」と僕を呼んでいます。
「やるよ、それ。」
最初はなんのことかわからずに聞き返すと、
「おまえは孫みてえなもんだからな、やるよそれ。」とのこと。
そのおじいさんが誰なのかわからず、良いのかなと躊躇していると、
「ほれ。」と
僕の手に握らせてくれました。
そこでこのおじいさんが桜井昭二さんだということを知りました。
名前とこけしはもちろん知っていたのですが、
ご本人の顔は全く知らなかったのです。
今思えばすごく失礼な話なのですが、
それでも昭二さんは優しく少し照れ臭そうに笑って接してくれました。
それが昭二さんとの出会いでした。

それから少し経った5月に、昭二さんの工房にお邪魔させていただきました。
昭二さんは可憐でかわいらしいこけしと共に、
コーヒーやヨーグルトなどを用意してくれていました。
昭二さんが作ってきたたくさんのこけしに囲まれていろいろな話をし、
楽しい時間を過ごしました。
帰り道工房の方を振り返ると、
こちらが見えなくなるまでずっと手を振ってくれていて、
心が温かい気持ちでいっぱいになりました。

2011年の正月には、
又五郎型のこけし絵の横に
「またお会いできるのを楽しみにしています」と書かれた年賀状をいただきました。
今年も工房にお邪魔させてもらえたらいいなあと思っているところに、
東日本大地震が起きました。
鳴子の方々ともしばらく連絡がとれず、
皆さん無事だろうかと心配で心配で心が落ち着く間もありませんでした。
そんな中、突然の昭二さんの訃報。
とても悲しい想いと共に、
まだまだ聞きたいことがたくさんあった、もっと昭二さんに会いたかったと、
後悔の念が浮かんできました。

昭二さんのこけしからは、東北地方独特の優しさや厳しさが滲み出ています。
そしてそれは昭二さんそのものと大きく重なります。
昭二さんのこけしを見るたびに手を振ってくれた優しい姿が思い出され、
今でもまだ目頭が熱くなります。
昭二さんに出会わなければ、こけしをここまで好きになることはありませんでした。
これからもずっと昭二さんのこけしを探し続けていきたいです。
ご冥福をお祈り申し上げます。

______________________________________

写真のこけしが、初めて祭りでいただいたもの。
3寸ほどの小さなもので、会場でさらさらと描いていたのを覚えています。
昭二さんの筆さばきはとてつもなく早く、
一瞬の迷いも何もありませんでした。