西山敏彦さんの傑作 西山辨之助型

西山敏彦さんの傑作 西山辨之助型

土湯温泉の西山敏彦さんと言えば「えじこ」。
そう言われる程大人気で、
あれだけ楽しく独創的なえじこは
唯一無二と言っても良いのはないでしょうか。
でも僕は思うのです。
敏彦さんが本当にすごいのはえじこじゃない、こけしだと。

西山辨之助。
敏彦さんの曾祖父です。
古作図譜に載る弁ノ助こけしの活き活きとした表情は、
弁ノ助にしか描けないもので、
現代の工人でこんなこけしを作れる人はいないように思っていました。
弁ノ助の生きた時代と現代では、全てがあまりにも違いすぎます。
でも敏彦さんなら
僕の陳腐な想像をひょいっと軽く飛び越えて作れちゃうような気もし、
「古作図譜の辨之助のようなこけしを作ってもらえませんか?」
とお願いをしてみました。
それから1ヶ月程経過し、そのこけしが届きました。
傑作です。

まだこけしが子供の手元にあった頃の景色までもが浮かぶ、
あまりにも玩具らしい辨之助型。
四角い顔には
グイッとつり上がった眉毛、
いたずらに笑う口元、
ざっくりと描かれた髪。
粗く挽かれた安定感のある太めの胴には
轆轤線が滲みます。
今まで敏彦さんが作ってきたどんなこけしよりも、
強い情味を放っています。
辨之助の生きた時代と現代が、
一本のこけしを通して繋がった気がします。
そしてその繋がりを産むことが、
こけしを「写す」ということなのでしょう。

やっぱり僕は思うのです。
敏彦さんが本当にすごいのはえじこじゃない、こけしだと。