高橋正吾さんから聞いた鋼の話

高橋正吾さんから聞いた鋼の話

だいぶ時間が経ってしまいましたが、
8月1日、2日に仕事で鳴子温泉に訪れました。
髙橋正吾さんのお宅では2時間ほど滞在し、
遊佐福寿さん大沼秀雄さん、
そして地梨の会でご一緒だった野地忠男さん達との
楽しい思い出話しを聞かせてくれました。
正吾さんとあまりそのような話はしたことがなかったので、
知られざる工人たちの素顔にわくわくし、
福寿さんのやんちゃぶりにはつい笑ってしまうのでした。

そして今回はカンナの素材である「鋼」の話しを初めて聞きました。
父であり師匠の武蔵が
足踏み轆轤時代に高野幸八から譲り受け、
使用していたという鋼は(その情景を想像するだけでドキドキします)、
日露戦争でその名を轟かせた東郷平八郎の名に由来する「東郷鋼」というもの。
イギリスのアンドリュー社という会社のもののようで、
それはそれは良く切れたとのこと。
東郷鋼について、詳しくはこちらから

当時、他にも良い鋼はないかと探し、
車のスプリングの鋼も、
「あの自動車メーカーのものがいいぞ」
「いや、あっちが良いらしいぞ!」
などといろいろ試してみたようですが、
スプリングの金属は炭素の量が少ないため、
あまり良いカンナに仕上がらず、
結局は粗挽き用にしかならなかったとのこと。
正吾さんが昭和30年代から現在も使っている鋼は
「ハイス(高速度鋼)」と呼ばれるもの。
この鋼は金属旋盤用で、硬く、丈夫で、長持ち。
カンナ、鋼の話もおもしろいものです。

そんな話になったのは、
今、張子では真空成型(機械成型)が主流になって、
情味が失われてきているんですよね、と僕が言ったことが始まりでした。
こけしも紙ヤスリに頼るようになってからはだいぶ変わってきましたと正吾さん。
もちろん良い意味ではないでしょう。
当たり前のことですが、
効率化にはプラスの面もあり、マイナスの面もあります。
ただプラスの面ばかり見ていると、
いつのまにかマイナスが肥大し、
本質が薄れていくのも当たり前のことです。
けれどその「当たり前」が
今は当たり前ではなくなっているように思うのです。
これからどこにいくのでしょうか。

写真のこけしは左から武蔵写し、直次写し、雄四郎写し。
「写し」ですが完全に正吾さんのこけしになっています。
85歳の正吾さんの作るこけしは、年々進化を遂げ瑞々しく枯れています。
そして深く深く本質に潜っていくのです、軽やかに。
ああ、素晴らしい。

今日から鳴子温泉は全国こけし祭りです。
まずは供養祭。
僕も明日から行きます。
楽しみです。
第61回全国こけし祭り