松田大弘さんのこけし

松田大弘さんのこけし

今年はじめにこけし工人としてデビューした鳴子温泉の松田大弘さん。
師匠は松田忠雄さん、大弘さんのお父様です。
最初に大弘さんのこけしを見たのは
ご自身のホームページだったと思いますが、
繊細すぎるくらいに繊細で、
独特な解釈で作られた丁寧な鈴木庸吉型でした。
伝統こけしの本質を感覚的にわかっている人が作るこけしであることに驚き、
松田さんの息子さん、こんなに良いものつくるのか、、、と
嬉しくワクワクした気持ちになりました。
9月のこけし祭り時に鳴子でお会いした際、
その庸吉型を作って欲しいとお願いし、
届いたのが写真のもの。
鈴木庸吉型(左)と高野幸八型(右)です。

高野幸八型についてはまたいつか触れるとして、
鈴木庸吉型について。
鈴木庸吉のこけしは、
素朴という言葉では片付けられない、濃密で激しい情味があるこけしです。
筆の運びは早く、動的なこけしとも言えるでしょう。
静的で端正な佇まいのこけしを作ることが多い松田家では、
このようなこけしは写すのはとても難しい。
普段との振り幅があまりにも大きい。
ただ鈴木庸吉のこけしをじっくり見ていくと、
激しい情味の中に、繊細さがかすかに滲んで見えてきます。
それこそが庸吉こけしの重要な魅力であり、
繊細さがこのこけしを支えているように感じます。
大弘さんは庸吉の写しをするにあたって、
この繊細さを抽出したのではないでしょうか。
これまで何人かの工人が庸吉型の写しを作ってきましたが、
このような解釈のものはなく、
大弘さんの独自性に唸らざるを得ません。
原と比べると印象はだいぶ異なり、
まだまだ硬く、発展の余地はありますが、
その余地さえも魅力のひとつに思えてくる不思議なこけしです。

そして師匠であり父の忠雄さんのこけしも
ここ数年の中で今、とんでもなく良くなっていることを忘れてはいけません。
そこには間違いなく大弘さんの影響と刺激があります。
伝統と血の繋がりと刺激。
素晴らしいことです。

大弘さんは鳴子のこけし工人としては最も若く、まだ20代。
とにかく未来があります。
これからが楽しみでなりません。
あと数年でデビューするであろうひとつ年上の桜井尚道さんと共に、
鳴子のこけしを、こけし界を引っ張っていただきたい。
強くそう思います。

鈴木庸吉のこけしについて