桜井こけし店

桜井こけし店

先日出かけてきた東北こけし旅行の1日目に、
3月に亡くなられた鳴子系伝統こけし工人桜井昭二さんにお線香をあげてきました。
昭二さんは自分のこけし蒐集の原点のような方でした。
昭二さんと出会わなければ、
ここまでどっぷりとこけしに惹かれることはなかったかもしれません。

店先で轆轤を挽いている息子の昭寛さんにあいさつをし、
仏壇のある2階へと案内していただきました。
お線香をあげ、ふと視線を上げると、
僕が差し上げた昭二さんの初期永吉型のこけし絵が飾られてあり、
不思議な気持ちになります。
仏壇の横にある低い机で、茹でたてのとうもろこしをいただきながら、
昭二さんの話をたくさんしました。
昭二さんは祭りの前になるとお孫さんがくる時と同じように
「一澄くんがくるんだ」と言って、
僕に会うのを毎年楽しみにしていてくれたようでした。
そんな話を聞くと、嬉しくも寂しい気持ちになります。

昭寛さんは
「今までは親父と一緒になって永吉型や岩蔵型を作ってる感覚があったから
考えもしなかったけど、一澄くんから親父の永吉型のこけし絵をいただいて、
親父の永吉型も作ってみようと思ったんだ。」
と言って、僕の為に初めて挽いてくれた永吉型(昭二初期作写し)を
見せてくました。
そのこけしは今までに見てきた昭寛さんの永吉型とは明らかに違い、
昭二さんの初期永吉型に匹敵するほどの、
鋭さと張りつめた緊張感が漂っています。
その横には昭二さんの永吉型があり、
「親父の遺作の永吉型。これももらってください。出来は良くないけども。」と。
昭二さんの力を考えれば、確かに出来は良くないかもしれませんが、
熱意だけで作ったとさえ思える迫力に、身体が震えました。

死を感じてか、次の場所に向かった昭二さんのこけしと、
昭二さんのいた境地に足を踏み入れたように思える昭寛さんのこけし。
その2本のこけしに「伝統」の深さを感じました。

写真は左から、桜井昭寛 岩蔵型、桜井昭寛 永吉型(昭二初期作写し)、桜井昭二 永吉型